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【豊根村特集】町から村へ、 山村留学事業を通して子どもたちの生きる力を養う 「NPO法人 とみやま交流センター」
2012.04.22 更新

山々の間を縫うように流れる天竜川の佐久間ダム湖。
この下にかつての村の中心部が沈んでいる。

愛知県で唯一の山村留学

 豊根村の木質バイオマス取材を終え、蛇行する天竜川の流れに沿って北上すること約1時間。
途中、車1台がやっとと思えるほどの道路を通り、富山(とみやま)地区にたどりつきました。
 後ろは急峻な崖、前は佐久間ダム。
深い山々に囲まれたV字形の渓谷にはほとんど平地がなく、家も畑も山の斜面につくられています。
静岡・長野・愛知の県境にあり、まさにここは奥三河の秘境。
 総人口は125人(平成24年1月末)、森林面積は地区総面積の94%以上にあたります。
かつては林業や養蚕、製炭などが盛んな土地柄で、筏に木材を積んで天竜川を下ったそうですが、
佐久間ダム建設によって村の中心部が湖底に沈み、全人口の約3分の1が離村。
平成17年に豊根村に編入されました。
それまでは、「本土で一番人口の少ない村」として知られていたそうです。
 合併以前から富山では、自治体として愛知県で唯一の山村留学事業に取り組み、
過疎化対策や地域の活性化に効果をあげてきました。
現在は、合併後の平成18年4月に設立された「NPO法人 とみやま交流センター」が中心となって、
山村留学「栃ノ実の里」事業に取り組んでいます。

旧富山村の精神を受け継いで

この地方の有力者で熊野神社の祭祀を務めた瀧家の屋敷跡に建てられた清山荘。
山村留学の宿泊拠点になっている。

子どもたちの部屋。一部屋に3人が一緒に生活する。

 山村留学とは、都市部に住んでいる子どもたちが親元を離れ、農山村で生活するというもので、
様々な体験を通して豊かな心と生きる力を身につけることを目的としています。
 「NPO法人 とみやま交流センター」は
旧富山村における山村留学の精神を受け継ぎ、瀧家屋敷跡に建てられた「清山荘」を拠点として、
短期(1泊~5泊)と長期(1年間)の山村留学生の受け入れを行っており、
また、豊根村や近隣の保育園児~中学生を対象として、
体験を通じて自然や地域文化の大切さを学ぶ「やませみクラブ」を運営しています。
同クラブには村の子どもとして山村留学生たちも参加します。
 短期山村留学の対象は小学1年生~小学6年生で、親子で参加できる日程もあります。
「1泊2日だと参加しやすいですね。豊橋・名古屋・浜松で募集しますが、反応はすごく良いです。
つい先日(取材日の数日前)春休みの短期山村留学が終わったばかりですが、
参加者22名中17名はリピーターでした。豊橋まで送っていくと、『夏も絶対に来るからね』
という嬉しい声が返ってきました。
『生きる力を学ぶ』というテーマに沿って、子どもたちが自主的に動けるよう声をかけています。
富山地区の特色を生かして、川での水遊びやネイチャーゲーム、
野外炊飯など様々な体験プログラムを組んでいますが、特に人気があるのはピザづくり。
登山だと参加者が少ないなど、子どもたちもプログラムの内容をよく見て
参加していることがわかります」と話してくれたのは、スタッフの西井浩隆さん。
 「清山荘」を訪れる子どもたちを出迎える2匹のロバ、チョコとミルクは大人気。
中にはロバの世話が楽しみで参加する子もいるそうです。

スタッフの西井浩隆さんは春日井市出身。富山に来て3年目。
ワーキングホリデーでニュージーランドに1年、オーストラリアに2年間留学し、英語を勉強。
多文化共生の中で様々な生活スタイルや価値観があることを学んだ。
「山村留学は都会とは違った価値観を得る場所。
子どものころからそういう体験ができるといいなと思います」

子どもたちに大人気のロバたち。黒い方がチョコ・白い方がミルク。
富山における山村留学のシンボル的存在だ。

富山地区の子どもとして過ごす

 長期山村留学は小学2年生~中学2年生が対象です。
今年は小学3年生が1人、小学5年生が1人、小学6年生が2人、中学1年生、2年生が各2人の
計8人が都会からやってきて、富山地区の子どもとして1年間過ごします。
継続も可能で、過去には3年間を富山で過ごした子どももいるそうです。
「長期山村留学する子には短期山村留学経験のある子どもが多いですね。
受け入れる前には必ず面接をして1泊2日の宿泊体験をしてもらいます。
子どもたちどうしはすぐに仲良くなりますが、時にはスタッフに甘え、反抗することも……
留学期間中は富山小・中学校の生徒ですから、
学校行事等に合わせて月に一度は保護者に来ていただくようにしていますが、
親が帰る時に泣く子もいます」と西井さん。
富山に来るというふんぎりをつけるまでには子どもなりにいろいろな葛藤があるでしょうし、
親の顔を見ると里心がつくのは無理もありません。

野菜を採ったり、スタッフと一緒に料理のお手伝いをしたり、
登山をしたりと様々な活動を通じて、1年間で子どもたちが学ぶものは大きい。

山村留学事業に地域の未来をかけて

「清山荘」に貼られた掲示。問題解決は自分たちでするのがルール。
話し合う中で、子どもたちは自分を見つめ、友達やスタッフの言葉に耳を傾け、
共に生きるうえで大切なことを学んでいく。

望めばすぐに何でも手に入る、どこにでも行ける……
そんな便利な都会生活に慣れた子どもたちは、周囲を深い山々に囲まれ、コンビニもなく、
時の流れが止まったような富山で1年を過ごすことでどのように変わるのでしょうか。
今回は子どもたちに直接感想を聞くことはできませんでしたが、
「清山荘」内に貼られたいくつかの掲示にその答えを見たような気がしました。
互いに知らない者どうしが共同生活をし、切磋琢磨しながら様々な問題を自分たちで解決し、
乗り越えていくことに山村留学の大きな意義があります。
子どもたちにとって学びの場は学校だけではなく、地域そのものなのです。
子どもたちとの交流は地域の人々にとっても大きな生きがいになっています。
しかし、今、そんな富山の山村留学も岐路に立たされています。
「今年は地区の小中学生が8人で山村留学生が8人。
保育園児がいないので保育園は一時休園になります。
山村留学はもともと農山村と都市との交流が目的で始められた事業なので、
留学生の方が多くなってしまっては本来の趣旨と違うのではないかという意見もあり、
これまでとは違った方向性を示さないと、
『NPO法人 とみやま交流センター』自体が存続できなくなります」と西井さんは言います。
センターが廃止されればスタッフとして職を得ていた西井さんたち移住者も
村をあとにせざるをえなくなり、過疎化が一気に進む可能性があります。
そのためセンターでは毎年1月3、4日に行われる「御神楽祭(みかぐらまつり)」に合わせて、
大人を対象とする着地型観光の山村留学や、ほかのNPOや企業とのコラボ、
地域起こしの事業とからめるなど、新たな道を模索しています。
「『やませみクラブ』の輪を近隣だけではなく、奥三河全体に広げたいですね。
また、山村留学OBの中には『指導員になりたい』と言っている子や、
率先してほかのOBに連絡をとってくれている子もいるので、彼らに協力してもらいながら、
今後は山村留学生OBのネットワークづくりをしていきたいと考えています」と語る西井さん。
山村留学事業には地域の未来がかかっている!
 これまで富山の人たちとセンターが一緒になってつくってきた都市との交流の輪が、
新しい形で広がりを見せようとしています。

斜面に作られた茶畑。茶は富山の特産品。上の方に見える神社が御神楽祭の行われる熊野神社。

編集員のココがオススメ!

住民の高齢化、過疎化が進み、豊根村の中でもさらに厳しい状況にある富山地区ですが、平成3年の秋には温泉が湧出。また毎年1月3、4日に熊野神社で行われる御神楽祭など、貴重な民俗芸能が残っています。1年間にわたる山村留学の中で、子どもたちは村の歴史や暮らしを学び、都会で生活していたときとは全く違った価値観を身につけることでしょう。帰りがけ、地元のお年寄りとその孫とおぼしき二人が、仲良くロバに餌をやりに来ていました。人間どうしのふれあい、人と動物とのふれあい、あたたかく血の通った交流が、富山にはあると感じました。

(松島頼子)

 

施設情報

施設名 NPO法人 とみやま交流センター
住所 愛知県北設楽郡豊根村富山字大谷19番地 清山荘
TEL/FAX 0536-89-2205
E-mail t.sanryu@yamasemi.recycling.vc
URL NPO法人とみやま交流センター
http://yamasemi.recycling.vc/

2012年3月28日現在の情報になります。
 


 

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