年が明けた2012年。
初漁であがった魚を見ようと訪れた先は、またまた桑名の赤須賀でした。
1月5日が初漁と聞いて午前中にかけつけるも、
漁港は閑散としており漁が行われている気配はまるでなし。
前日の雪がこの日も残り、どんよりと曇った空からはみぞれがパラパラと降り続ける。
風も強いことから今日は中止か……。
がっくり肩を落として港を後にしようとしたら、漁協の方とばったり。
聞けばシジミやハマグリの漁は中止も、シラウオだけは4組の船が出漁しているとのこと。
産卵のため春に川を遡上するというシラウオは、春を呼ぶ魚。
赤須賀での漁は毎年1月から3月頃まで。
年によって獲れたり獲れなかったり。
漁獲量の変動が激しく、昨年はほとんど獲れなかったそうです。
今年は漁にめぐまれるのかどうか。
気持ちがそわそわして落ち着かないなか、操業を終えた船の到着を待ちました。
船が帰港するとさっそく寄って、獲れたばかりのシラウオを見せてもらいました。
丸い大きなカゴのなかをのぞくと、大きさは5センチぐらい、
半透明の細長い体をした小さな魚がびっしりとつまっています。
陽を浴びて輝くシラウオを前に、どの漁師の顔からも笑みがこぼれます。
そして始まった昼過ぎからの入札。
カゴにつまったシラウオが、次々と取引の行われる小屋へと運びこまれます。
気がつくと、小屋のなかや周囲は多くの人だかりができ、ものすごい熱気です。
今期初のシラウオを見ようと、地元の漁業関係者や報道陣、
待ち望んでいた一般人などもつめかけ、漁港は大いにわきました。
この日のシラウオは揖斐川の河口で獲れたもの。
獲った漁師によると、まだ体は小さく、これから成長し太ってくるのだそうです。
この魚は「梅の咲く頃が卵をもってうまい」のだとか。
地元のしぐれ屋では、たまりで炊いたものを「紅梅(こうばい)煮」と名づけて販売しています。
生のまま酢醤油で、また卵とじや唐揚げ、かき揚げにしてもおいしいシラウオ。
生はプルプルとした歯ごたえでツルンとした喉ごし。
火を通すとやわらかいフワフワな身は口のなかでくずれます。
味わうたびに近づく春の足音が聞こえてきそうです。
今年も訪れた海や川でたくさんの幸と出会えますように。
シラウオの初漁でわく漁港を足取りも軽く、満足感いっぱいで後にしました。
(新美貴資)
2012年1月5日現在の情報になります。