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【豊橋市特集】 柿づくりを通じた地域おこしをめざす柿儂人 「ベル・ファーム」鈴木義弘さん
2011.11.09 更新

「手をかけるほど、よいものができる」と語る鈴木さん。今年の柿は実が大きく、味もよいそう

次郎柿の日本有数の産地で知られる豊橋市石巻地区で、
市内最大規模の果樹園「ベル・ファーム」を経営する、鈴木義弘さん。
大正時代から続く柿専業農家の4代目という歴史を大切にしながら、
「全国初」という先進的な取り組みに挑む豊橋百儂人の柿儂人です。
次々と新しい方法を考え、実践する鈴木さんに、ご自身ならではの柿づくりや、今後の展開を聞きました。

興味を持ってもらうには「ほかと違うこと」を

陽をあびて輝く次郎柿。ビタミンもたっぷり

鮮やかなオレンジに色づく、鈴木さんの農園。
ここの柿は宮内庁に献上されたこともあり、今年も豊かな実りの季節を迎えました。
一般的な柿づくりに加え、鈴木さんが手がけているのが「ポット栽培」です。
大きめの鉢に果樹を植えるため、水や肥料の管理がしやすく、実は大きく、味も甘くなります。
“桃栗3年、柿8年”の8年を待たず、2年くらいで実が採れるメリットも。
実は、このポット栽培は鈴木さんが大学院で研究を重ねた先進的農法。
当時、ほかの果物では採り入れられていましたが、柿ではまだでした。
「学生時代は卒業後すぐに農業を継ぐ予定はありませんでした。
しかし、研究室の先生が、私たちが学んだのは
『現場で生かすための技術。実証して普及させなくてどうするんだ』と。
それで農業を継ぎ、農園の一部を使ってポット栽培を始めたのです」。

石巻地区では、柿は当たり前すぎる存在。特に注目されることはありません。
「だけど、“ほかと違うこと”をすると、興味を持ってもらえます。
作っているものは同じですが、取り組みを変えたのです」。

品種を増やし、バランスよく生産

「柿に語りかける気持ちで日々つくっています」と鈴木さん

次に、鈴木さんは次郎柿以外の品種の栽培を始めます。
「次郎柿は11月初旬がピーク。
たくさん収穫できたら値段は逆に低くなるし、時期を過ぎたら収穫量は減ります。
だから、柿農家は“忙しい割に儲からない”となる。
割に合わなければ、農家は作らなくなる。畑が荒廃していく。
この状況がこわいと思いました。なんとかしなくてはいけません。
そこで、次郎柿の時期の前と後に収穫できる品種を栽培しようと考えました。
作物を変えることで、長くバランスよく生産ができるように」。
ベル・ファームでは次郎柿に加え、9月下旬から収穫できる早秋、富有など5品種を栽培。
ゆくゆくは10品種ぐらいまで増やしていきたいそうです。

また2009年には、
柿農家として全国初のJGAP(農業生産工程管理といわれる日本版GAP)認証を受けました。
食の安全や環境への配慮なども含めた農場管理はお墨付きです。

愛着を深めるための取り組みも進行中

眺めのよい鈴木さんの農園。石巻地区には柿畑が広がっています

ベル・ファームで出迎えてくれた、柿の実のジャック・オー・ランタン。鈴木さんのお手製です

新しい取り組みを進める鈴木さんに影響を及ぼしたのは、子どもの頃から尊敬する曾祖父。
町の共同出荷に尽力したり、科学的な理論を学び広めた、柿づくりで地域に貢献した人物です。
先人たちが懸命に道を拓いてきた豊橋の柿づくりも、今や兼業農家が圧倒的多数になり、
作り手は高齢化が進み、畑を手放すケースも増えています。
そうした荒廃した農地も任されている鈴木さん。どうしたら再興できるかを常に考えます。
導き出したのは「次郎柿に愛着を持ってもらう」こと。
地元の子どもたちや、柿農家以外の人などに向けた取り組みを進めようとしています。

そのひとつが、小学生の体験学習の受け入れや、中学3年生への「合格次郎柿」のプレゼント。
合格次郎柿は8年間続けており、テレビ局の取材も受ける注目度の高さです。
「子どもたちが成長し、市外、県外へ巣立っていこうと、
産地で育った思い出とともに次郎柿を記憶にとどめていてほしいですから。
社会へ出たら柿の宣伝をしてくれるかもしれませんよね。
地元の子どもたちに次郎柿が浸透するようにと思っています」。

さらに、柿農家以外の人にも次郎柿に興味を持ってもらおうと、ユニークなビジョンも描いています。
「柿にふれる“実践場”みたいな場をつくりたいと考えています。
たとえば、荒廃した農地をイチから開墾することを、
市街地に住む人や会社員には“週末の楽しみ”に、リタイアした世代には“第二の人生”にしてもらったり…。
農園を一定期間手伝ってくれた人には、
そこで収穫した柿を贈るという制度をつくるのもいいかもしれません。
みんなで柿づくりを楽しんで、農園がやり甲斐や絆を感じられる場になればうれしいですね」。
受け継がれてきたものが、これから何十年、何百年も続いていくように。
みんなの力で地域をよりよくしていこうというのが鈴木さんの考えです。

編集員のココがオススメ!

豊橋百儂人では副代表を務める鈴木さん。「儂人に与えられた環境は一人ひとり違うけど、人と会い、情報交換をし、お互いに刺激し合うことが大切。それぞれの思いを持って活動することが、結果的に豊橋の農業の発信につながるのです」と話していました。これまで、作物を「つくる」ことはできても、「発信」は弱かったという農業。鈴木さんのように強い発信力を持つ儂人が、地域の伝統を守り、さらに育てていくのだと感じました。鈴木さんの柿は、「豊橋丸栄」地下一階の「豊橋百儂人」のコーナーやベル・ファームのホームページなどで購入できます(秋季)。

(南 由美子)

農園情報

名称 ベル・ファーム
住所 〒441-1106
豊橋市石巻小野田町字下切田31
URL 次郎柿のベル・ファーム

2011年10月17日現在の情報になります。


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