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大人気の焼きガキ食べ放題!森、川、海の恵みをうけて育つ鳥羽の「浦村カキ」
2010.03.02 更新

冬から春先にかけておいしいのがカキです。
この時期は栄養をたっぷり蓄えていることから、味も良くて身もぷりぷり。グリコーゲンやタウリン、
カルシウムなど多くの栄養成分を含んでいて、「海のミルク」とも呼ばれています。
煮たり焼いたり揚げたり、生食用はそのままでも。いろいろな食べ方で味わうことができる人気の貝類です。

養殖カキの産地として、全国でも有名なのは広島、宮城県ですが、この伊勢湾でも
たくさん生産されていることを知っていましたか?
湾に面した三重県鳥羽、志摩市などの産地では、10月頃から始まったカキの出荷が最盛期を迎えています。
なかでも鳥羽市の浦村町は、県内でもっとも養殖が盛んなところ。ここでとれたものは「浦村カキ」として、
東京や大阪、名古屋などに出荷されています。生産者がカキ小屋で提供する焼きガキの食べ放題も人気で、
シーズン中は多くの客が訪れます。そんな養殖の現場を見ようと、浦村をたずねてみました。

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甘みがあって身もプリプリ。焼いて食べるのが人気の「浦村カキ」

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バス停「浦村」からのぞむ麻生浦湾。養殖のイカダがたくさん浮かんでいます

浦村へ向かったのは、寒さの厳しい1月下旬。JR・近鉄鳥羽駅から、バスにゆられること約40分。
のぼりくだりの激しいまがりくねった海沿いの道を進むと、人口約1000人の漁師町が見えてきます。
晴れ渡る空の下には、伊勢湾へとつながる麻生浦(おおのうら)湾が広がって、
たくさんのカキ養殖のイカダが浮かんでいました。

浦村で養殖されているカキは、日本でとれるもっとも代表的な種類のマガキです。
イカダからロープでカキを海中に吊るす、「垂下式」と呼ばれる方法で育てられています。
麻生浦湾では82の業者が養殖を営み、1250基のイカダが浮かんでいます。
カキの稚貝である「種ガキ」を仕入れるのは毎年10月。「種ガキ」はホタテの貝殻にびっしりとついており、
その貝殻に穴をあけてロープを通し海中に吊るします。そして1年間海のなかで育てられ、
たっぷりと身のついた翌年に収穫されます。

カキを収穫しに湾内のイカダへ

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水揚げされるカキ。写真の右側にある貝割り機によってばらされて、カゴのなかに落ちていきます。

浦村の漁港に到着したのは午後3時すぎ。
この日うかがったのは、浜田英夫さんと息子の章吾さんが経営する浜英水産です。
英夫さんはカキ養殖を営んで30年以上になるベテランで、章吾さんも漁師歴は10年以上。
夕方に章吾さんがカキを収穫しに行くというので、さっそく現場を見せてもらいました。

加工場のすぐ前に係留されていた小型の漁船に乗って、章吾さんと湾内にあるイカダへ。
5分ほどで到着すると、章吾さんはすぐにイカダに飛び移り、
カキを吊るしている長さ約7メートルのロープを手でたぐりよせて、漁船のほうへと引っ張ります。
船に積んでいるウインチにロープを取り付けて巻き上げると、海中からカキが勢いよく姿をあらわします。
いくつもが密着した黒い大きなかたまりを、貝割り機に通してばらしていきます。
しぶきをあちこちに飛ばし、ガラガラと音をたてながら、たくさんのカキがカゴを埋めていきます。

びっしりとカキがついたロープの重さは、海中でも30キロぐらい。ロープ1本からとれるカキは、
100キロを超えるそうです。章吾さんが引っ張っているロープを持たせてもらいましたが、
あまりの重さに耐えきれず、すぐに代わってもらいました。
こうした重労働の連続で、多くの養殖業者が腰を痛めてしまうそうです。
この日にあげたロープは10本で、収穫したカキは1トンを超えました。
現場での作業は40分ほどで終わりましたが、体はすっかり冷え切ってしまい、陸にあがってからも
震えがしばらく止まりませんでした。

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(左)収穫したカキはクレーンを使って加工場へ。
(右)加工場では選別や貝掃除などを手作業で行います。

収穫して加工場へと運んだカキは、手作業で一つずつにばらして不良なものをとりのぞき、
付着物や汚れを落としていきます。その後はネットに分けて入れ、再び海にもどして1ヶ月ほど畜養します。
低い密度の環境でしばらく育てると、身の入りがさらに良くなるそうです。
さらに生食用のカキは畜養した後で、殺菌海水が流れる水槽に活かしたまま一定時間いれて浄化します。
収穫されたカキは、人の手による様々な作業をへて、むき身や殻付きの商品として出荷されています。

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イカダや加工場を案内してくれた浜田章吾さん

「実際は手間がかかって、すごく大変なんですよ」と話す章吾さん。
イカダや加工場での作業を見て、カキ養殖が体を酷使する厳しい仕事で、
出荷までには多くの労力と時間がかかることを知りました。
浜英水産では、加工場の横にある店で焼きガキなどの料理も提供しています。
3月末までの出荷シーズン中は、カキの収穫から加工だけでなく、料理の仕込みや店での接客など、
早朝から夜遅くまで家族で作業に追われる忙しい日が続きます。

とれたては焼いて食べるのが一番

この季節、焼きガキの食べ放題が楽しめる浦村町は鳥羽の人気スポットです。
町内には養殖業者らが経営するカキ小屋が22軒あり、旬の海の味覚を求めて県内外から多くの客が訪れます。

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(左)食べ放題で人気の焼きガキ。
(右)ご飯、フライ、グラタンなど浜英水産が提供するカキを使った料理。

浜英水産で提供する焼きガキ食べ放題のメニュー(大人1人2500円)には、焼きガキのほかにも、
カキのご飯、味噌汁、フライ、グラタンなどがつきます。店にくる客のほとんどはリピーター。
東海、関西方面からが多く、予約は1ヶ月先まで埋まっているそうです。
網のうえで焼かれたカキは、殻が真っ黒でアツアツ。軍手をつけて専用ナイフでザクッと殻を開けると、
汁気たっぷりのプリッとした身があらわれます。たまらず口に入れると、
甘みと潮のしょっぱさが広がって、さらに食欲がわいてきます。

そんな浦村のカキですが、昨年10月にこの地方をおそった台風18号によって、
かつてないほどの大きな被害を受けました。イカダの多くが流されて、たくさんのカキを失ってしまったのです。
鳥羽磯部漁協浦村支所によると、今シーズンのこれまでの生産量は例年の6割ぐらいで推移しているとのこと。
「こんな経験したことがない。もう再起は無理だと思った」。
長年にわたって浦村の海を見続けてきた英夫さんが、その時の悲惨な状況を振り返ります。
それでも養殖業者は団結して壊れたイカダを回収。1ヶ月にもわたる復旧作業で、
なんとか収穫シーズンを迎えることができたのです。

浦村の養殖業者からは、伊勢湾に注ぐ木曽、長良、揖斐川の木曽三川がとても大切だとの話を聞きます。
これらの川によって運ばれてきた山からの栄養分が、伊勢湾をとおって浦村の海にまで流れ込み、
カキの餌となるプランクトンを育てているそうです。その豊富なプランクトンをたくさん食べて、
小さな「種ガキ」から身のたっぷりついたカキへと1年で成長するのです。

一つにつながっている森、川、海。
その豊かな自然の恵みと生産者の日々の努力によって育てられた「浦村カキ」。
いろんな食べ方でおいしく味わうことができますが、とれたてはそのまま焼いて食べるのが一番!
食べだしたらとまらない。そんな浦村の焼きガキをぜひ味わってみてください。
(新美貴資)

おすすめメニュー

カキ食べ放題は大人1人2500円、小人1人1500円(小学6年生まで)、
小学生未満 500円(3歳未満は無料)。屋内の場合は2時間制。カキの佃煮(200グラム・1000円)、
カキのむき身(500グラム・1000円)、殻付き(30個・2200円)など直売価格で販売しており、
浜英水産のHPからも注文できます(送料別)。

店舗情報

店名 浜英水産
住所 三重県鳥羽市浦村町1212-6
アクセス JR・近鉄鳥羽駅からパールロード方面へ車で15分。
同駅から「石鏡港」または「志摩スペイン村」行きのバスに乗って「今浦」で下車し、
徒歩15分。
TEL/FAX 0599-32-5932
営業時間 食べ放題は11:00~16:00まで。

事前の予約が必要です。
定休日 シーズン中(11月から翌3月末ぐらいまで)は無休。年末年始は休み。
臨時休業もあるため、営業日はお店に直接お問い合わせください。
座席数 45席(屋内・屋外あわせて)

2010年2月25日現在の情報になります。

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